松原通と新町通の交叉点は、江戸時代に「十念ヶ辻」と呼ばれていた。毎年12月20日に行われた六角獄舎囚人の死刑執行の日に、囚人が引き回しされるルートで、あの世とこの世の境のひとつであった。そのすぐそばに、道祖神がひっそりと祀られている。平安京のできる以前から境界線を護る「塞(さい)の神」として祭られ、宇治拾遺物語にも「五条道祖神」という名前で出てくる。
『宇冶拾遺物語・巻一ノ一』 藤原道綱の子で、読経が上手だが大の女好きの道命阿闍梨が、和泉式部といい仲になり毎夜のごとく逢い引きをしていた。ある夜、いつものように式部のもとで寝ていたところ、ふと目を覚ましたので、明け方近くまで法華経をすべて読み、また寝ようとした。すると、人の気配がする。お前は誰かと尋ねると、五条の西洞院の辺りに住む翁(道祖神)だという。翁は「日ごろは精進潔斎して読経されるので、わたしのような者は聴聞できないのですが、今夜は行水もせずに読経され、梵天・帝釈が来ていないので、こうして聴聞することが出来ました」と感謝の言葉を述べた。 このことから、いくらこのような場合で経を唱えようとも、身を清くして唱えるべきであるという事を戒めている。
「松原道祖神社」の御祭神は猿田彦命(さるたひこのみこと)・天鈿女命(あめうずめのみこと)を祀り、道の神・旅を守る神・夫婦円満・縁結びの神として信仰されている。春と秋には祭りが行われる。(下京区新町通松原下がる) |